手張りと機械張りについて

三味線の皮を張るには道具が必要です。昔ながらの道具で張るのを「手張り」と呼んでいます。そして誰でも簡単に張れるように発案された三味線の皮張り機もあります。それで張るのを「機械張り」と言います。手張りは時間がかかりますが機械張りは短時間での作業で済みます。手張りは微調整がきくので繊細な張り具合を実現できますが機械張りはどうしても大雑把な張り具合になります。


手張り用の道具(張り台・きせん)、左に半分だけ映っているのが皮張り機


手張りだけど皮張りが下手な三味線屋

総合的に見て手張りのほうが断然いいのですが他店を見ていると必ずしもそうでなかったりするのが面白いところです。というのはせっかく手張りでやっているというのに全然張り具合がダメなお店があったりします。

このようなお店が張った三味線に出会う機会(テレビや演奏会など)はかなり多くてそのたびにまったく心地良さがないボンボンした音色には三味線本来の良さがまったく感じられなくて非常に残念な気持ちになります(あくまで個人的見解です)。

機械張りだけど皮張りが上手な三味線屋

そして非常に少ないのですが機械張りで非常に熟練されたお店もいらっしゃって、そこはなかなかの張り具合となかなかの音色を出してくるので侮れません。特に大きな音を出す津軽三味線には機械張り特有の大雑把な感じがうまくマッチングしていてパッと聞いた時の音色には良い印象を受けます。ただしばらく聞いているとところどころ大雑把な感じが伝わってきちゃいます。

機械張りでしかも皮張りが下手な三味線屋

熟練されたお店の機械張りはいいのですがそうでない機械張りのお店の張り具合と音色は酷いものです。価格的に非常に安いもののほとんどは「機械張り」です。手張りですと時間と手間がかかりすぎて安い値段で提供できないからです。インターネット上には「手張り」を謳っていながら安いものが見られますが、以前そのお店の皮張りしたものを見る機会があってそれはやはり「機械張り」でした。

手張りで皮張りが上手な三味線屋

「手張り」であるレベル以上の張り具合と音色を知ってしまうと「機械張り」では満足出来なくなります。当然ながら「手張り」であるレベル以上のお店は数少ないです。お店の大小や知名度は関係なく、地元でしか知られていないような三味線屋さんでもビックリするような手張りをしたりします。

変な話、どこどこのお店は「手張り」、どこどこのお店は「機械張り」ってリストを作れます、もちろん非公開(笑)。

ほとんどの琴屋さんは皮張りが下手

見分ける一つの目安は「三味線屋」なのか「琴屋」なのかです。琴屋さんも琴が専門なのであって、もし三味線の皮張りをご自分でやっている場合はなかなか良ろしくありません。これは手張りであろうとなかろうと、です。ですので実際に多くの琴屋さんは皮張りは別の職人さんにお願いしています。うちが琴は琴屋さんのお願いするように、です。

ただ珍しいことに皮張りも抜群に良い琴屋さんもいらっしゃるのですがここは例外中の例外で、ただ皮張りはいいけど三味線の棹の調整などにはあまり無頓着なのが残念なところです。

手張りと機械張りの見分け方

ちなみに「手張り」と「機械張り」は見分けることができます。

上の画像は「手張り」です。少し黒ずんで見えるところが「きせん」で「皮をかませた」跡です。下の画像は「機械張り」です。上の画像と皮のところを見比べてみてください。

上の画像が「機械張り」、皮を「かませた跡」が残っていますがこの跡が同じ間隔ではっきり残っているようなら「機械張り」です。

「手張り」の場合、噛ませる位置は職人さんによって違いますし、なおかつ自分自身の張り方を他の職人さんに分からないよう噛ませた跡を出来るだけ消すようにしているのです。

0コメント

  • 1000 / 1000